【アニメ】新世界より 第14話 ネタバレあり

いよいよ出ました、教育委員会。
教育委員会による査問を受ける前の早季の父や母の言動が、早季を取り巻く状況の危うさを如実に表現している。
「変に時間をあけるのはまずい」と情報工作を行ったと思われることすらも警戒する神経の使いよう。
教育委員会はそれほどの権限を持ち、畏怖ももたれている。
そこに娘の命運を委ねるしかない早季の両親。
このことが富子との話にもつながる。
呪力を持った人間は、核兵器などより恐ろしい脅威となりうる。
なぜなら、兵器などはそれを使用しようとする者が物理的に操作して使用する。
瞬の業魔の話でも出てきたが、呪力は基本的にはマントラも必要とせず、イメージだけで発動できてしまう。
つまり、物理的操作には他者による妨害という防衛手段を講じる余地があるのに対し、呪力にはその余地がない。
人そのものが兵器であり、基本的には繰り返し使える強力な兵器となりうる。
現在、現われている脅威の態様としては、「悪鬼」と「業魔」という二つが存在するが、この他の態様によって人々を殺戮する手段が本当にないかは、現在のところ確認されていないだけで、他にもあるのかもしれない。
つまり、防ぎようのない強力な攻撃手段を持つ者がいて、他のものには脅威が発現した際に、防ぐ手段がないとすれば、その力がすでに大きな脅威となる。
だとすれば、すべての脅威を監視し、発現の兆しがあれば排除するのがもっともこの脅威に対して確実な抑止法となる。
ゆえに、守と真理亜がたとえ町に戻らず、自分達だけで自活の道を歩もうとしたとしても、富子達にはそれを容認することができないのだ。
監視できない脅威が存在すること。これがもっとも防ぎようのない脅威となる可能性を秘めている。
だから、教育委員会は「悪鬼」「業魔」の危険因子を確認し、何者にも干渉されることなく排除する絶対的な権限を有している。
親子であっても、それに干渉することは許されない。ことは、銃を所持しているというレベルの話ではないのだから。

査問会で早季を待っていた教育委員会の委員長鳥飼宏美と副委員長小松崎昌代の態度は、まさに熟練した尋問のチームプレーと言えるだろう。
一人が高圧的に詰問し、もう一人がやさしく信頼を得るような言動をする。すると、ただでさえ緊張と不安に苛まれている人間には、高圧的な役回りの人間に敵意を、逆にやさしい人間に好意を持つ。好意をもった人間にはガードが甘くなり口を滑らせやすくなるというわけだ。
これにかかっては、さしもの覚も容易に懐柔されたことだろう。
そして、鳥飼宏美は選別に入る。守の口から知られてはいけない情報が漏れたのか、否か?
小松崎は口ごもる早季を急きたてる。神栖66町の住人が守の起こしたことにより、外出禁止令を出されて不安な時を送っていると。守の行動は身勝手だと。
事実を知っている早季に言わせれば、こんな一方的な意見があるだろうか?
一つの命が自分の命を守りたいと願うことが身勝手だなどと。
おそらく、早季は自身が話したことがどういう結果をもたらすか、ある程度予想はできていただろう。
予想してなお、友のために言わずにはいられなかった。

ここで、鳥飼宏美は無感情に人権を持たない、モノを一つ不良品として選別した。
冷徹なセリフは、手順の一つ目であったに違いない。
排除するモノを哀れむセリフで、仕方がなかったのだという自己弁護を完成させる。
排除するモノには、自分自身の責任により処分されなければいけないのだと思い込ませる。
いずれも、仕方がないのだと。

ここに朝比奈富子と鳥飼宏美の決定的な差が見て取れるように思う。
富子は子供たちを処分することに関し「濁」としている。できることなら避けるべきことでありながら現状止むを得ない。
宏美はともすれば、「清」としている。この作業により人々の安全は保たれている。自分は私情を挟むことなく高潔な職務を遂行しているのだ。
器の違いがはっきりと出てしまっている。
だから、富子の言に宏美は抗えない。自分のせいだと言われれば、反論しようとするも言葉に窮する。
なんとか自分達の行為を「清」としようとするから、都合の悪いことは見せず、隠れてしようとする。

富子に諭されて、守と真理亜を連れて帰ろうと決意する早季だが、二人が町を出る危険性を知らなかった時の早季は二人が町を出るという決断にもっといい方法があればと町に戻っただけで、二人が姿を消すことを内心どこかで予想していた。最悪、それでもいいと。
だから、急いだ。が、間に合わなかった。
事態が悪い方向へ収束していく。


(以下、あらすじ)


覚は戻って状況を複雑にしないように説明することにしたのだろう。
しかし、覚の後姿を見送った早季は、事態の深刻さから自分も町に戻ることにする。
残る二人に、早まったことをしないように言うと長板を履いた。
振り返ると、守を真理亜が力づけるように抱きしめていた。
そして真理亜は振り返り、言葉を発する。

町に戻った早季を、心配そうな両親が出迎える。
「おなか空いてない?」
やさしく問いかける母は、早季を思いやる。
父は、早季を心配しながらも教育委員会からの呼び出しを伝える。
「ちょっとだけ、やすませてやれない?」
教育委員会からの呼び出しは緊急であったし、遅くなることは早季にとっても不利になるだけだった。
母は別れ際、早季に言う。
「早季、わかるわね。何でも尋ねられた事をありのままに答えるのよ。」
早季は答える。
「わかってる。」

両親から話され、一人査問会に出頭した早季。
副委員長の小松崎昌代が口火を切る。
「訊かれたことは正直に答えなさい。隠し事や嘘をつかないように。わかりましたか?」
「はい」と答える早季。
すると、事実確認が始まる。
そして、守を探しに言ったことを聞くと、副委員長は「なぜ、両親に報告しなかったのか」と訊く。
「おおごとにしたくなかった」と言う早季に、それは隠ぺい工作だと叱責する。
早季のあら捜しをしようとする小松崎に、委員長の鳥飼宏美が何事か囁く。
すると、小松崎は質問をかえ、事実確認を続ける。
そして「伊東守君は見つかったのですか?」という小松崎の質問に対し、早季は正直に言うべきか迷う。
カマを駆けようとする小松崎を制して、鳥飼が、覚の供述内容を話し、「事実ですか?」と訊く。
話した内容が覚や早季たちしか知らないことを含んでいたので、それが本当だと知った早季は「はい」と答える。
そして、守を連れて帰らなかった理由を尋ねられた早季は、どう答えていいか困る。
事実を話せば、教育委員会が隠そうとしている生徒を処分することや、不浄猫の件など口にしてはいけない内容を話さなければならない。
口を閉ざす早季にじれた小松崎は、自分勝手な守の行動のせいで町の人たちが不安におののいていると言う。
その理不尽さに早季は、事実をありのままに話す。
顔色を変えて、早季の発言を止めようとする小松崎。
ついに、早季は査問会を侮辱したという理由から、処分が決定される。
ハッキリとは言わないが、最悪の処分であることは早季の覚悟していた。

その時、朝比奈富子が査問会の場に姿を現す。
そして、早季のことについては自分に任せて欲しいと言う富子。
しかし、倫理委員会の干渉を受けることをよしとしない鳥飼は富子に反駁する。
富子は責任の一端は鳥飼達にあるという。守の処分が性急すぎたこと、その処分も果たせなかったことが理由。
また、富子は自分にも責任があるという。
そして、これからどうするかを考えることが先決だと鳥飼を説得する。
鳥飼もついに折れる。
次いで、
「囲炉裏端を貸してもらえるかしら?」
と富子が言うと、小松崎は「あの、そちらは、いま...」と口ごもる。
富子はすべてを承知しているとばかりに、
「いいのよ。すべてそのままにしておいて。」
と顔色一つ変えない。

囲炉裏端には不浄猫が三匹、鎮座していた。
開口一番、早季は覚の安否を尋ねる。無事だと言う回答をもらい、ホッとする早季。
話は、早季たちのいる一班が特別だという話になる。
他の子供たちは問題が起こらないよう、記憶の操作を繰り返し、思考の自由を与えないのだと言う。
だが、一班の早季たちにはそれをほとんどしなかったと言うのだ。
理由を尋ねる早季に、富子は一班が特別な集まりであったこと告げる。
早季は町の指導者として期待される人格を持ち、Xは町で最も将来を嘱望される力と聡明さをもっていた。
Xの話は、早季の封じられた記憶にさざ波をたてた。
普通は、思考の操作により八丁標を越えると考えるだけで震え上がってしまうはずだが、守と真理亜は殺されるぐらいならと八丁標を越えた。
理性的な考えではあるが、看過はできないと富子は言う。
呪力を持った人間は恐ろしい脅威となる。そのことを早季に言って聞かせる富子。
それが、人々の目の届かないところに行き、忘れ去られながら生き続けるという脅威。
その脅威を理解した早季に、二人を連れ戻させようとする。連れ戻しさえすれば、二人の命は保障すると言う。
早季は期限を三日に切られ、捜索でまた戻ることにする。
「富子さんが来てくれなければ、わたしはこの猫たちの獲物になっていたんですね。」
「それはどうかしら?」
含みを持たせる富子。
「どうして富子さんは、これほど強い影響力をお持ちなんですか?」
その問いには答えずに富子は早季を船着場まで送る。

その途中、富子はさっきの問いに答える。
権力者はさまざまは方法で権力を得てきたが、自分にはそれらのどれもなかったと。
だが、時間だけはたっぷりあったのだと言う。
その時間そのものとそれによって得た膨大な歴史が富子の権力の源泉だという。
富子はテロメアを修復することで、齢を267歳まで数えていた。
富子があった悪鬼は245年前に出現した悪鬼だった。
別れ際、富子は早季に言う。
「帰ってきたら、新しい課題をやってもらうことになるわ」
早季がいままでやっていたのは割れたつぼを修復するという地味なものだった。
しかしこれが、テロメアを修復する基礎的な技術であるのだと富子は言う。

出発した早季に覚が追いついてくる。
査問を受けた後、ずっと拘束されていたが、突然すぐに早季のあとを追うようにと言われたのだ。
二人は再び道を引き返し、守と真理亜の元へと向かう。
しかし、二本松にはもう、かまくらはなかった。

あの時、覚のあとを追い、町に戻ろうとする早季に、真理亜は言った。
「さようなら」


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25

関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント