マルコビッチ

すっとんきょうな御仁と言うのはどこにでもいるもので、今日はそんな方の話。

過日、そんな人の車に同乗させていただき傷跡を残しながらも復興の進む沿岸部の道路を走っていると、運転席からおもむろに話しかけてくる。

いまだにちょっと感傷を感じてしまう沿岸部では、車窓をぼーっと眺めてしまうことが多いのだが、それが遮られた。

「あのさ...」

「なにっ!」

「さっき通った小学校の遊具の上に、ちっちゃなボートがのってんじゃん」

「ああ、のってたね」

見るとはなしに目に入っていたボートを思い出して答えた。

誤解のないように付記しておくと、これは津波による爪あとではないのであしからず。

意図的に設計され、のっけられたもののはず。詳しくは知らないですが。

「あの舟に、文字書いてあるのわかるかい?」

「え、書いてあったっけ」

「見えてなかったか。『チビッコ丸』って書いてあるんだけど、こっち側に書いてあるのが右から左に向けて書いてあるんだ」

どういうことかと言うと、舟の舳先に船名が記されているのは皆さんもよく見ると思いますが、遊具の舟にも『チビッコ丸』と同じように書いてあったのだ。

舟は右舷がこちらから見えるように置かれているので、横書きで書いてある場合に書き方として二通りの方法がある。

左から右へ表記する方法と、右から左へ表記するという方法がある。

後者は、左横書きに慣れ親しんだ世代にはちょっと読みにくい。

例としては『ピノキオ』を『オキノピ』と表記するわけだ。

つまり、彼は舟に右横書きで書いてある『チビッコ丸』の話をしたかったのだ。

「あれ、何回か見てるんだけど、最初見たとき『まるこびっち』って舟に書いてあってなんだかカッコイイ、洒落てんなあって思ったんだよ」

「ああ、『丸コビッチ』ってね」

「でも、じつは『チビッコ丸』だった!」

「はあ。で?」

「いや、それだけ。ちょっと普通でガッカリした」

再び、車窓に視線を戻すと、復興の進む沿岸部の景色が流れていった。

『正確には『丸コビッチ』じゃなくて『丸コッビチ』だし、マルコビッチがカッコイイってどういう感性だ?』

目的地まではまだ1時間はかかる...

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コメント

はははは

チビッコマルコビッチ丸!これが一番かっこいい!
と思う私。ダメでしょうか・・・ははは。
1時間、きっと楽しかったでしょう・・・ははは。

いっぱい笑わせていただきました~ありがと~

Re: はははは

きたあかりさんへ

かっこよくもややこしくもあるかも。
フーッと時が流れていきましたよ。

楽しんでいただけたのであれば、よかったです。^^

No title

電脳高架橋さんへ

こんにちは^^

私としては、普通の「チビッコ丸」の方が好きですが、
「チビ(ツ)丸コ(ちゃん)」の方がいいかも^^

「復興の進む湾岸線の景色・・・」
今は景色も大分変わったようですが
当時のことは一生忘れることはないでしょうね。

Re: No title

yukoさんへ

> こんにちは^^

こんにちは!

> 私としては、普通の「チビッコ丸」の方が好きですが、
> 「チビ(ツ)丸コ(ちゃん)」の方がいいかも^^

かわいいですけど、「いやだよぉ、あたしを引き合いに出すのはよしとくれよぉ」とか言われそうですね。

> 「復興の進む湾岸線の景色・・・」
> 今は景色も大分変わったようですが
> 当時のことは一生忘れることはないでしょうね。

自分は基本的にそういうことに関しては楽天的な人間で、幸運にもそれほど衝撃的な目に合ってはいないのですが、そういう方々がたくさんいるかと思うと、心が痛みます。
そういう方々のためにも、明るく安全な再建がなされるといいと思いますね。

コメントありがとうございます。
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